two for nine
流れる時間に漂う
   

時間を感じる two for nineから

恋ことば
    〜もうこんなには人を愛せない 絶対に愛せない〜
    〜I(愛)覚めやらぬ 恋しや慕しや 行きつ戻りつ 過ぎ行く〜

      絶対に愛せないと言いながら 気持ちの定まらない不安。

バースデーカード
    〜そんな姿のシルエットまるで昨夜のように 浮かんでは消える〜
    〜私からのバースデーカード メッセージ書いては捨てる〜

      幻のようなシルエット、出すあてのないバースデーカード 無意味な行為。

向日葵
    〜私 髪を切ったの 悲しみの成れの果て〜
    〜ha... 情念は繰り返し 向日葵の花が
      語りつづける 人は誰でもいつかやさしくなれると〜

      決然と時間を区切る行為とはうらはらに時間の流れに求める心の安定。

夢一夜
    〜花が咲くのも 鳥が鳴くのも 一瞬のいのち〜
    〜太陽沈み 海が満ちるも 永遠のいのち〜
    〜めぐり合い 抱き合い 傷つく〜

      「一瞬」を歌い、「永遠」を歌う。定まらない時間の流れの中での人の営み。
ライムライト
    〜素朴な時が止まった 寒い夜に〜
    〜道路の際の 裂けたタイヤ回っていた〜
    〜出遭いをくり返すでしょう どんなときも 生きる・・・〜

      時間を切り取るような描写に続く、不確かな「確信」。3人称と1人称が混じる不安定さ。


two for nine と tiptop
two for nine では、流れる時間を意識させる「ことば」がたくさん使われています。印象に残るものを挙げてみますと、道すがら、行きつ戻りつ、掌めないまま、解らないまま、誕生日おぼえていたら、夏の足音、語りつづける、私の涙知りつつ、刹那にドラマする などなどです。
そして、その時間の進み方は不安定で、その時間の中に身を置いていいものかどうか不安になります。

前のアルバム tiptopでは、情景が目に浮かぶ曲がたくさんあり、その中に自分を置いて安心して聞くことが出来ました。例えば、大好きな「軌道」。過去の確かな時間に、身を置く心地良さがありました。

two for nine 全体にあるのは、定まらない時間の中に身を置いている自分をどうしようかといった 不安です。tiptop全体には力強さがあり、曲に入り込んでも自分に返った後にすがすがしいものが残りました。しかし、two for nineでは 不安なままで流れる時間の中にに置かれているような感覚が残ります。

このアルバムは私に・・・・
人にとって時間の流れは、永遠ではなく 必ずそれぞれに 絶対といっていい停止があります。その停止を絶対と考えないで、一直線ではないけれど その後にも時間があり、その時間の中で また私(たち)は生きていくことが出来るということをこのアルバムは気づかせてくれました。

私(たち)が、流れる時間の中に漂い 行きつ戻りつしていても 「向日葵の花は力いっぱい歌い 雨は万華鏡のように体をぬらす」ことでしょう。
そして、私(たち)の外に とどまることなく流れている時間があることに気づいた時に、また生きる力が沸いてくるのではないでしょうか。


元気な真梨子さん、これからも応援しています。いつまでも、素晴らしい歌を聞かせてください。

(TKN 99.7.18)